結論から言うと、キャリアコンサルタントとは「働く人が自分のキャリアを自分で選び取れるよう、対話を通じて整理・支援する国家資格の専門家」です。転職エージェントの担当者やハローワークの相談員、企業の人事担当者など、実はいろいろな立場の人がこの資格を持って活動しています。筆者自身はキャリアコンサルタントの資格を持っているわけではありませんが、これまで3回の転職を経験し、そのたびに年収を上げてきました。転職や働き方の相談先を探す中で「キャリアコンサルタントって結局何をしてくれる人なんだろう」と疑問に思ったことがきっかけで、この資格について調べてまとめたのがこの記事です。資格取得を考えている人はもちろん、「相談する側」として名前だけは知っておきたいという人にも役立つ内容になっています。
キャリアコンサルタントとは何をする専門家なのか
キャリアコンサルタントは、厚生労働省が所管する国家資格で、法律上は「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」を行う専門家と定義されています。かみ砕いて言うと、相談者が「自分は何がしたいのか」「どんな働き方が合っているのか」を一人で抱え込まずに、対話を通じて言語化していく手伝いをする仕事です。
具体的な支援内容は主に次の3つに整理できます。
- 相談者の経験・価値観・強みを一緒に棚卸しし、自己理解を深める
- 転職・異動・独立・学び直しなど、具体的な選択肢を整理する
- 目標達成に向けたアクションプラン作りに伴走する
キャリアコンサルタントは「答えを教える人」ではなく、あくまで相談者自身が納得できる意思決定をするための伴走者、という位置づけである点が特徴です。
国家資格になった経緯と今の位置づけ
キャリアコンサルタントは、もともと民間の任意資格として存在していましたが、2016年4月に職業能力開発促進法の改正により国家資格として位置づけられました。国家資格化にあたって「名称独占資格」と定められており、この資格を持たない人が「キャリアコンサルタント」を名乗ることは法律で禁止されています(相談業務自体を行うことまでは禁止されていません)。
さらに2022年には同法が改正され、事業主に対して労働者のキャリア形成支援に関する相談機会の確保が努力義務として盛り込まれました。これを受けて、企業が社員のキャリアを定期的に棚卸しする「セルフ・キャリアドック」のような制度を導入する動きも広がっており、企業内でキャリアコンサルタントを活用する場面は年々増えている状況です。
実際に、厚生労働省および国家資格キャリアコンサルタントWeb登録センターの公表資料によると、登録者数はここ数年で着実に増加しています。
| 時点 | 登録者数(累計) |
|---|---|
| 平成28年度末(2017年3月、国家資格化直後) | 25,518人 |
| 令和2年度末(2021年3月) | 59,557人 |
| 令和6年3月末(2024年3月) | 72,567人 |
| 令和7年12月末(2025年12月) | 85,513人 |
出典:厚生労働省(人材開発統括官付キャリア形成支援室)「キャリアコンサルタント登録状況」、国家資格キャリアコンサルタントWeb登録センター公表資料
国家資格化から10年足らずで登録者数は3倍以上に増えており、資格の認知度・活用シーンは今後も広がっていくと見られています。
産業カウンセラー・キャリアアドバイザーとの違い
「キャリアコンサルタント」と混同されやすい肩書きがいくつかあります。それぞれの立ち位置を整理すると、次のようになります。
| 名称 | 資格の種類 | 主な役割 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| キャリアコンサルタント | 国家資格(名称独占) | キャリア形成全般の相談・助言 | 国家試験に合格し登録が必要。5年ごとの更新講習あり |
| キャリアコンサルティング技能士 | 国家資格(上位資格) | 高度なキャリアコンサルティングの実施・指導 | 一定の実務経験が必要な2級・1級があり、難易度は高め |
| 産業カウンセラー | 民間資格 | 職場のメンタルヘルスケアが中心 | 心理的な悩みへの対応に比重があり、対象範囲がやや異なる |
| キャリアアドバイザー | 資格不問の職種名 | 転職エージェントでの求人紹介・マッチング支援 | 資格がなくても名乗れる。キャリアコンサルタント資格を持つ人もいる |
ポイントは、「キャリアコンサルタント」は国家資格という制度上の裏付けがある名称である一方、「キャリアアドバイザー」は資格の有無を問わない職種名として使われているという点です。転職エージェントで相談に乗ってくれた担当者が、実はキャリアコンサルタント資格を持っていた、というケースも珍しくありません。逆に言えば、資格を持たずにキャリアアドバイザーを名乗っている人も多く存在するため、「相談相手が国家資格保有者かどうか」は、相談先を選ぶ際にひとつの目安になります。産業カウンセラーとの違いをさらに詳しく知りたい人は、キャリアコンサルタントと産業カウンセラーの違いは?国家資格と民間資格を徹底比較で資格の性質・費用・合格率・更新制度まで整理しています。キャリアアドバイザーとの違いを法律上の位置づけ・仕事内容までさらに詳しく比較したい人は、キャリアコンサルタントとキャリアアドバイザーの違いとは?資格の有無・仕事内容・なり方を整理も参考にしてください。国家資格取得後の上位資格である技能士との違いは、キャリアコンサルティング技能士とは?1級・2級と国家資格キャリアコンサルタントの違いを徹底比較で詳しく整理しています。
キャリアコンサルタントの主な活躍フィールド
キャリアコンサルタントの資格は、次のようにさまざまな現場で活かされています。
- 企業の人事部門(社員のキャリア面談、研修企画など)
- 転職エージェント・人材紹介会社(求職者のキャリア相談、求人マッチング)
- ハローワークや地域の職業訓練機関
- 大学・専門学校のキャリアセンター(学生の就職支援)
- 独立してキャリア相談やキャリア研修を提供する働き方
企業に所属しながら人事の一部としてキャリアコンサルティングを行う人もいれば、資格を武器に独立してキャリア相談業を営む人もおり、働き方の自由度が比較的高い資格だと言えます。
本業を持ったまま週末や夜間に副業としてキャリア相談を行う人も増えています。副業として成立するかどうか・単価の目安についてはキャリアコンサルタントは副業でできる?を参照してください。
気になる年収・収入の実態
「キャリアコンサルタントとは」を調べる記事の多くは、試験制度の説明までは詳しいものの、実際の収入面についてはあまり触れていません。これは、キャリアコンサルタントという働き方が「企業内の一業務としての活用」から「独立した専業」までかなり幅が広く、一律の相場を示しにくいことが理由だと考えられます。
とはいえ、雇用されて働くキャリアコンサルタントに限れば、実際の調査データがあります。労働政策研究・研修機構(JILPT)が2023年6月に公表した労働政策研究報告書No.227「第2回キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査」(2022年実施、有効回答n=7,586)によると、就業形態別の年収分布は次のとおりです。
雇用形態別の分布に加えて、独立・フリーランスの年収レンジ、求人票ベースの年収との違い、「年収が低い」と言われる構造的な理由までを1本にまとめた詳しい解説はキャリアコンサルタントの年収は本当に低い?にあります。
| 年収帯 | 正規雇用(n=3,935) | 非正規雇用(n=2,042) |
|---|---|---|
| 収入なし | 0.6% | 0.3% |
| 100万円未満 | 0.3% | 3.6% |
| 100〜200万円未満 | 0.7% | 10.8% |
| 200〜300万円未満 | 4.8% | 28.0% |
| 300〜400万円未満 | 12.1% | 26.2% |
| 400〜500万円未満 | 14.2% | 18.6% |
| 500〜600万円未満 | 14.8% | 7.2% |
| 600〜700万円未満 | 12.1% | 2.6% |
| 700〜800万円未満 | 10.6% | 1.0% |
| 800〜900万円未満 | 7.7% | 0.6% |
| 900〜1,000万円未満 | 6.4% | 0.2% |
| 1,000万円以上(複数区分の合算) | 16.1% | 0.6% |
出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)労働政策研究報告書No.227「第2回キャリアコンサルタント登録者の活動状況等に関する調査」(2023年6月公表、2022年実施、税込み個人年収・有効回答n=7,586のうち正規雇用n=3,935・非正規雇用n=2,042)。「1,000万円以上」は複数の年収区分をまとめた合算値のため、単一の年収帯としては500〜600万円未満(14.8%)が最多です。
この調査によると、正規雇用では単一の年収帯としては500〜600万円未満が最も多く、700万円以上の層(複数区分の合算)も合わせると4割強を占めています。一方、非正規雇用では年収200〜400万円未満に半数以上(54.2%)が集中しており、雇用形態によって年収分布に大きな差があることが分かります。ただしこの調査は雇用されて働く層が対象で、独立・フリーランスとして活動する層の年収はまた別の傾向を示しています。詳しくは以下の記事で整理しています。
雇用形態以外の切り口で大まかな傾向を整理すると、次のようになります。
- 企業の人事担当者などが資格を業務に活かすケース:既存の給与体系に資格手当が上乗せされる程度のことが多く、資格単体で収入が大きく変わるとは限らない
- 転職エージェントなどでキャリアアドバイザー職として働くケース:業界・会社の給与水準に依存し、成果報酬型のインセンティブがある会社も多い
- 独立してキャリア相談・研修講師として活動するケース:案件単価は自分で設定できる分、収入の振れ幅が大きく、実績や集客力次第で差がつきやすい
いずれのケースでも「資格を取れば自動的に収入が上がる」というものではなく、資格をどう活かすか、どんな場でキャリアを積むかによって結果が大きく変わってくる、という点は押さえておきたいところです。実際、筆者自身も資格の有無とは関係なく、転職のたびに自分の市場価値や希望条件を整理し直したことが年収アップにつながったと感じています(個人の経験であり、誰にでも同じ結果が保証されるものではありません)。
「相談する側」として知っておきたいこと
ここまでは資格そのものの説明でしたが、資格取得を考えていない人にとっても、「キャリアコンサルタントに相談する」という選択肢を知っておく価値はあります。
- 転職エージェントの担当者が国家資格保有者かどうかを聞いてみるのも、相談相手を見極める一つの手がかりになる
- ハローワークや地域のジョブカフェでは、無料でキャリアコンサルタントに相談できる窓口が用意されていることが多い
- 民間のキャリア相談サービスでは有料相談が一般的で、料金体系はサービスによって異なるため、事前に確認が必要
- 「転職するかどうか迷っている」段階でも、キャリアの棚卸しだけを目的に相談することは可能
自分一人でキャリアを考えていると、どうしても目の前の求人条件や年収の数字だけで判断しがちになります。第三者と対話しながら経験や価値観を整理する時間を持つことは、転職するにせよしないにせよ、意思決定の質を上げる手段のひとつになり得ます。無料で使える相談窓口の種類と選び方は、転職相談 無料で使える窓口とは?キャリアコンサルタントに相談する際の選び方で整理しています。
資格取得を目指す場合のステップ
ここからは、自分自身がキャリアコンサルタントの資格取得を目指す場合の話です。試験は年に複数回実施されており、受験にあたっては厚生労働大臣が認定する養成講習(合計150時間)の修了、または一定の実務経験などの受験資格を満たす必要があります。試験は学科試験と実技試験(論述・面接)で構成されており、日本キャリア開発協会(JCDA)・キャリアコンサルティング協議会(CC協議会)が公式に発表している直近の試験結果によると、学科合格率は回によって55〜81%程度、実技合格率は63〜69%程度で推移しています。社会保険労務士などの他の国家資格と比べると取り組みやすい部類に入りますが、回によって差があるため、最新の数値は各実施団体の公式発表、または試験の難易度を実数値で整理した記事で確認することをおすすめします。
とはいえ、150時間の養成講習をどこで受けるかによって、学べる内容の深さやサポート体制、学費負担は大きく変わってきます。教育訓練給付制度の対象になっている講座であれば学費の一部が支給される場合もありますが、対象講座であることや本人の雇用保険加入期間などの受給資格を満たす必要があるため、「誰でも必ず〇%戻ってくる」わけではない点には注意が必要です。
養成講座は学校によって通学・オンラインの比率やサポート体制、合格実績の出し方がかなり異なります。資格取得を具体的に検討し始めたら、まずは気になるスクールの資料を比較してみるところから始めるとイメージがつかみやすくなります。
まとめ
キャリアコンサルタントとは、労働者のキャリア形成を対話によって支援する国家資格の専門家であり、2016年の国家資格化以降、企業・転職エージェント・公的機関など幅広い現場で活用が広がっています。産業カウンセラーやキャリアアドバイザーといった似た肩書きとは役割や資格の性質が異なり、収入面も働き方によって大きく差が出るため、「資格=高収入」と単純化しない理解が大切です。資格取得を目指す人だけでなく、転職や働き方に迷ったときの相談先の一つとして「キャリアコンサルタント」という選択肢を知っておくだけでも、いざというときの判断材料になるはずです。


